職務経歴書ひとつで明暗が分かれる転職活動
相談業務を引退してから1年が過ぎようとしていた今年の秋、私の講座の元受講生からの紹介だという30代後半の男性から転職相談の依頼メールが届いた。
私がすでにこの仕事から引退している旨は承知しているが、転職活動に行き詰まり、どうしても相談に乗って欲しいという切実な内容が綴られていた。聞けばまったく応募書類が通らず、面接にすらたどり着けない状態だという。
私が得意とするキャリアの棚卸しと職務経歴書の作成が当面の課題であり、メールからも彼の熱意が伝わってきたので、この相談を引き受けることにした。
面接にこぎつけられない履歴書と職務経歴書
このようなケースでは、事前に履歴書や職務経歴書を送ってもらい、何が不調の原因になっているかを把握した上で面談に臨むのがいつもの私のスタイルだ。彼の場合も、送られてきた書類に目を通すと、面接にこぎつけない理由が見えてきた。仕事をする上で差し障りがありそうなこと、つまり採用する側に懸念を持たせるようなことが記されていたからだ。
実際にはそれほど心配する必要がないことや自分自身真で対応可能なことであっても、あえて書類に記されていれば、求人側としては面接を避けたくなるのは当然のこと。
面接の結果、スキルが足りないとか、経歴が仕事内容とマッチしていないというのは想定内だが、初めから何か問題を抱えている人を採用する可能性は極めて低いし、無駄を承知で面接する求人者は皆無だろう。
更に職務経歴書のまとめ方にも課題があった。2枚の用紙に小さな文字でびっしり書かれた内容は、この手の書類を見慣れている私でさえ、彼の全体像が把握しにくいものだった。丁寧に書かれているので真面目さだけは伝わるだろうが、アピールポイントが今ひとつ掴みにくい。ましてや行間を読むとか、彼の性格を推測しながら良いところを見つける、などという期待は持てるはずもない。もっともカウンセラーの私としては、そこに着目した上でアドバイスを行うことになるわけだが。
転職活動は自分のキャリアを真剣に考えるチャンス
そんな事前情報を元にじっくりと相談を行った結果、多少は自信を取り戻したようで、後日送られてきた彼の履歴書、職務経歴書は素晴らしいものに書き換わっていた。因みに素晴らしいというのは、等身大の彼を正確に伝えているという意味。決して上げ底しているわけではないので念のため。
私のキャリア相談のスタンスは、職務経歴書を本人が書くことを重視している。なぜなら自分が今までやってきた仕事を客観的に見つめ直し、正当な自己評価を持つ機会は、何より大切だと考えているからだ。終身雇用が期待できない今、生涯にわたるキャリアは自らの力でデザインしていかなくてはならない。
待ちかねた採用の内定通知
あれから2か月以上経ち、転職は成功したのだろうか、それとも何か問題でも起きたのか?と心配していた矢先、とうとう朗報が舞い込んできた。採用の内定がついに出たそうだ。
両親にも心配をかけ心苦しい時を過ごしていたようで、内定が出た時にはほっとして、まずは両親の顔が浮かび、そして次に私の顔が浮かんだのだそうだ。(まあ、うれしい!)
履歴書と職務経歴書を修正したら続々と面接通知が届いた!
詳しく聞くと、応募書類の方はあれから7〜8社ほど面接の連絡が来たと言う。相談前はすべて書類で落ちていたので、この激変ぶりにまず驚いたそうだ。書類の書き方一つでこんなにも変わるものか、というのが正直な気持ちだったらしい。
実際に面接に行くと、仕事内容のことや諸条件が折り合わず、今まで時間がかかったそうだが、今回はようやく自分でも納得できる転職先と思えた様子。
新規立ち上げの会社なので一抹の不安を感じている様子も伺えたが、彼の望んでいる業務内容に近い上、待遇面では不満はなさそう(大手の資本が入っている)。将来性もある事業分野であることから、キャリア形成の面でも発展性が望めそうと、転職活動としては大成功と言えそうだ。
今後も何か相談ごとがあったらいつでもどうぞと伝えて電話を切った。フォローアップの機会が用意されていることは、クライアントにとっては心の拠り所にもなると思うので。